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2026.05.26

コラム

デ!さんぽ ~デザインのみちくさ~ Vol.2
キャッシュレスより、現金だった日

先日、とあるマルシェの出店に参加したデザイナーさんから、こんな話を聞きました。

出店者の方々は、しっかりキャッシュレス決済の用意をしていて、準備としては万全。
いざ始まれば、スムーズに回るはず——だったのですが。

ふたを開けてみると、少し意外なことが起きていました。
思っていたよりも、現金で支払う人が多かったそうです。体感では、ほぼ9割くらい。

キャッシュレスの方が早いし、便利です。
お釣りもいらないし、支払いの列も詰まりにくい。

それでも、なぜか現金が選ばれている。

少し気になって、その様子を観察しているうちに、なんとなく理由が見えてきたそうです。

現金でのやり取りには、ほんの少しだけ“間”があります。
財布を開けて、お金を取り出して、手渡す。

その“間”に、「お金ちょうどありますよ」「ありがとうございます」
そんなやり取りが、自然と生まれていました。

たった数秒ですが、そこにはちょっとした会話があります。
ただ“支払う”だけじゃない、その場に関わっている感じ。

デザインの話になると、「便利にすること」はやっぱり大事。

迷わない、早い、ストレスがない。
いわゆるUI/UXは、基本的にはその方向に向かいます。

でも、こういう場面を見ると、大事なものはそれだけではないな、と思ったりしたそうです。

便利=良い体験。これはたぶん間違いない。
でも、
不便=悪い体験、というわけでもなさそうです。
むしろ、少し手間があるからこそ生まれるものもある。

デザインって、何かを足して良くする仕事に見えますが、実際は「何を残すか」という視点からアプローチしていることも多いです。

効率化すれば消えるもの。
一方で、それがあるから成立している体験。

それをどう扱うか。

最適化しすぎると、どこも同じような体験になります。
でも、ちょっとした余白や寄り道があると、その場らしさが出てくることもあります。

あの日のマルシェでの出来事は、便利さよりも“その場らしさ”が選ばれていたからなのかもしれません。


そういえば子供の頃、親から1000円札をもらって、屋台の列にダッシュで向かったあの感じ。
どこか似たような空気の中にあった気がします。

——コラムを書きながら、少しだけ昔の思い出にも寄り道した日でした。